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東京地方裁判所 平成5年(ワ)13676号 判決 1996年12月20日

原告

中丸洋一

右訴訟代理人弁護士

高松薫

中野通明

被告

株式会社一陽

右代表者代表取締役

後藤もゝ代

被告

後藤もゝ代

右二名訴訟代理人弁護士

福原弘

白井徹

主文

一  被告株式会社一陽は、原告に対し、一八万三三五一円及びこれに対する平成五年三月一九日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告株式会社一陽に対するその余の請求及び被告後藤もゝ代に対する請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用中、原告と被告株式会社一陽との間に生じたものは、これを三〇分し、その一を被告株式会社一陽の、その余を原告の各負担とし、原告と被告後藤もゝ代との間に生じたものは原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告に対し、各自六三二万七五〇〇円及びこれに対する平成五年三月一九日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告株式会社一陽(以下「被告会社」という)の従業員であった原告が、被告会社に対し、雇用契約に基づく未払賃金の支払い、委任契約ないし準委任契約に基づく出張費用、パーソナルコンピュータ代金、マンションの賃料及び米国関連会社従業員の賃金の各立替金の支払い並びに事務管理に基づく保守契約代行料の支払いを請求するとともに、被告後藤もゝ代に対しては、被告会社の監査役や実質的な取締役としての責任等に基づき、被告会社に対する請求と同額の金員の支払いを請求した事案である。

一  争いのない事実等

以下の事実関係は、(書証略)及び当時者間に争いのない事実を総合して認定することができる。

被告会社は、後藤敏夫(被告後藤もゝ代の夫)が、昭和五七年五月二一日に設立した株式会社であり、設立目的の中でも特にコンピュータソフトウェアの開発及び絵画販売等を中心的な業務としていた。後藤敏夫は、昭和五〇年に洋画家鈴木信太郎(被告後藤もゝ代の実父。平成元年五月死亡)の絵画の販売等を目的として、五洋通商株式会社を設立していたが、被告会社は、その子会社に当たる。被告会社においては、平成三年一一月一日付けで、後藤敏夫及び小林千左三が代表取締役に就任したが、後藤敏夫は、平成四年八月一三日に死亡した。また、被告後藤もゝ代については、平成三年四月二五日付けで被告会社の監査役に就任した旨の商業登記が、平成四年一月二〇日になされた。同被告は、後記の原告による催告書が到達した時点及び現在、被告会社の代表取締役である(以下、右五洋通商株式会社を「五洋通商」、右後藤敏夫を「亡敏夫」、右小林を「小林社長」、被告後藤もゝ代を「被告もゝ代」という)。

原告は、平成三年一月、被告会社と雇用契約を締結した。

原告は、平成五年三月一九日に被告もゝ代に到達した催告書により、前記六三二万七五〇〇円の支払いを請求した。

二  争点

1  原告の被告会社に対する請求関係

賃金請求権の有無(争点1)、出張費用立替金償還請求権の有無(争点2)、パーソナルコンピュータ購入代金立替金償還請求権の有無(争点3)、マンション賃料立替金償還請求権の有無(争点4)、米国関連会社の従業員に対する賃金立替金償還請求権の有無(争点5)、保守契約代行料請求権の有無(争点6)

2  原告の被告もゝ代に対する請求関係

監査役の責任ないし取締役責任の類推等により、被告会社に対するのと同額の金員支払請求をすることの可否(争点7)

三  当事者の主張

1  争点1(賃金請求権の有無)について

(原告)

(一) 原告と被告会社との間には、平成四年当時、被告会社が原告に対し、本給として月額五〇万円を支払う旨の合意があった。

(二) 原告は、平成三年一一月ころ、亡敏夫と、原告が副収入を得るときの入金の窓口として設立したペーパーカンパニーの有限会社エヌ・アンド・ワイと被告会社との間の業務委託契約に基づく業務委託料という形式で、月額二五万円の追加賃金を被告会社が原告に支払い、もって、実質的に原告の賃金の補填をすることを合意した。このような形式を用いたのは、他の社員との関係もあって直接原告名義宛に支払うことが難しいからであり、右の金員の性質は原告に対する賃金である。

(三) したがって、原告は、被告会社に対し、雇用契約に基づき、本給につき、平成四年一一月及び同年一二月の二か月分である一〇〇万円、追加賃金につき、平成四年一月ないし同年八月までの八か月分である二〇〇万円、合計三〇〇万円の請求権を有する。

(被告ら)

(一) 被告会社は、亡敏夫生前中も、業績が極めて悪く、巨額の負債を抱え、資金繰りに非常に苦労していたが、平成四年八月一三日、同人が急死した後、当時の代表取締役であった小林社長は被告会社の存続が不可能であると判断し、被告会社の営業を停止して被告会社を閉鎖する旨の方針を決め、同月ころ、被告もゝ代に対し、その旨を伝えた。平成四年九月以降、被告会社の全ての営業活動は停止され、小林は、同年九月ころ、被告会社東京営業所において、従業員に対し、同年一〇月分の賃金の支給(支払日は同月二〇日)が最後の賃金支払となる旨等を説明して、同月をもって全員を解雇する旨を告げるとともに、原告に対しても、他の従業員と同様、同月をもって解雇する旨を告げ、さらに、小林社長自らも、同月をもって被告会社を退職した。また、被告会社の神戸営業所については、同営業所の別会社としての独立準備のため、東京営業所よりも一か月遅れで閉鎖することとされ、同営業所所属の従業員は、同年一一月をもって、全員被告会社を退職した。右のとおり、被告会社は、平成四年一〇月をもって原告を解雇したのであるから、原告に対する平成四年一一月分及び同年一二月分の賃金の支払義務はない。

(二) 被告会社は、原告との間において、原告主張にかかる追加賃金の支払いを合意した事実はない。

2  争点2(出張費用立替金償還請求権の有無)について

(原告)

(一) 原告は、平成三年から平成四年にかけ、被告会社の業務に関連して、以下のとおり米国に出張し、各項記載のとおりの金員を支出した。

時期   支出金額

<1>平成三年八月及びその前回 五六万三一九六円

<2>平成三年一〇月 九万一八九〇円

<3>平成三年一一月 一四万三四九〇円

<4>平成四年七月 二万九八七二円

<5>平成四年九月 八六万三一二一円

原告は、当時被告会社代表取締役であった小林社長の授権ないし許可の下に右の金員を立て替えて支出したものであり、雇用契約に付随した委任もしくは準委任に基づき、右立替払をしたものといえる。よって、原告は、被告会社に対し、民法六五〇条に基づき、右立替費用の償還を請求する権利があり、そのうち、<1>ないし<4>(合計八二万八四四八円)に<5>の内金である一七万一五五二円を加えた合計一〇〇万円につき、右償還請求権を行使する。

(二) 原告は、被告会社から、後記主張の一二〇万円の出張費用の仮払いを受けたことはないが、仮に右仮払金が存在したとしても、原告は、被告会社の右仮払金返還請求権と、原告が平成四年一一月の米国出張において立替払した六一万七〇八九円及び平成四年九月の米国主張(前記<5>)において立替払した八六万三一二一円のうち本件請求にかかる一七万一五五二円を除いた金額の一部である五八万二九一一円の計一二〇万円の立替払金償還請求権とを、遅くても平成八年七月一九日の本件口頭弁論期日において対等額で相殺したから、被告らの後記相殺の主張は理由がない。

(被告ら)

(一) 原告の出張費用請求全般について

被告会社においては、出張に関し、原告を含めた従業員全員につき、事前に個別の承認及び決済を受けることが必要とされていたが、小林社長が、原告主張の出張に対し、指示、許可等を与えたことはない。したがって、原告及び被告会社間には、原告主張にかかる出張についての「雇用契約に付随した委任もしくは準委任」契約は、明示的にも黙示的にも成立していない。

(二) 平成三年中及び平成四年七月の出張費用請求について

(1) 仮に、右の費用につき、被告会社に支払義務が存したとしても、被告会社は、これらにつき、これまでに全て精算の上、原告に弁済したので、債務は全て消滅した。

(2) 仮に、右の費用につき、被告会社に弁済未了の債務が残存していたとしても、被告会社は、原告の当該弁済未了の費用償還請求権と、後記(三)により生じた被告会社の原告に対する過払金返還請求権三三万六八七九円(原告の被告会社に対する八六万三一二一円の債権を、被告会社が原告に交付した仮払金一二〇万円により精算した差額)とを、平成八年七月一九日の本件口頭弁論期日において、対等額で相殺した。

(三) 平成四年九月の出張費用請求について

仮に、被告会社に右出張費用支払義務が存するとしても、被告会社は、原告に対し、右出張費用として、原告が実際に要したとする八六万三一二一円を上回る一二〇万円を既に仮払いしており、被告会社が原告に支払うべき未精算金は存しないのであるから、原告の請求は理由がない。

(四) 原告の相殺の主張について

原告は、平成四年一〇月をもって被告会社を解雇されるとともに、被告会社はそのころには営業を停止していたものであるから、原告が、平成四年一一月に米国に渡航したとしても、これは被告会社の業務命令に基づくものではなく、原告の私用のための渡航に過ぎない。したがって、被告会社に右渡航費用の支払義務はないから、原告主張にかかる相殺は理由がない。

3  争点3(パーソナルコンピュータ購入代金立替金償還請求権の有無)について

(原告)

原告は、被告会社が、平成四年七月、四〇万円で購入したアップル社製マッキントッシュ・パーソナルコンピュータの代金を、平成四年八月及び同年九月に、それぞれ二〇万円ずつ合計四〇万円立替払した。

原告は、当時の被告会社代表取締役小林千左三の授権ないし許可の下に右立替払をしたものであり、雇用契約に付随した委任もしくは準委任に基づき、右支払いをしたものである。よって、原告は、被告会社に対し、民法六五〇条に基づき、右四〇万円の償還請求権を有する。

(被告ら)

被告会社においては、備品の購入に関し、原告を含めた従業員全員につき、事前に社長による個別の承認及び決済を受けることが必要とされていた。しかしながら、小林社長が、原告主張にかかるパーソナルコンピュータの購入について、指示や許可等を与えたことはないのであって、原告及び被告会社間には、原告主張にかかる右購入についての「雇用契約に附随した委任もしくは準委任」契約は、明示的にも黙示的にも成立していない。したがって、被告会社には、右購入代金についての支払義務はない。原告が右パーソナルコンピュータを購入したとすれば、それは原告が被告会社の業務とは関わりなく私物として購入したものである。

4  争点4(マンション賃料立替金償還請求権の有無)について

(原告)

被告会社は、東京都千代田区富士見にあるマンション(以下、略)を賃借し、事務所として使用してきたが、平成四年一二月から賃料等を支払わなくなったため、原告が、共益費を含めた月額一六万五八三〇円の金員を、平成四年一二月から平成五年二月までの三か月分、合計四九万七四九〇円立替払いした。

原告は、雇用契約に付随した委任もしくは準委任に基づき右金員を立て替えたものであるから、原告は、被告会社に対し、民法六五〇条に基づき、右四九万七四九〇円の償還請求権を有する。

(被告ら)

(一) 右のマンションは、被告会社が原告用の社宅として賃借していたものであるところ、被告会社の当時の代表取締役であった小林社長は、平成四年一〇月をもって被告会社の従業員を解雇するにあたり、原告その他被告会社の借上社宅を使用していた従業員に対し、解雇後も当該不動産の継続使用を希望する場合には、各自賃貸人と交渉し、賃借人の名義を自己の名義に変更して賃借するよう通告した。原告は、被告会社を解雇された後の平成四年一一月以降も、小林社長の指示に従わず、右のマンションの賃借人の名義を変更せずにこれを使用していたものであるが、原告はもっぱら個人的な目的のためにこれを使用していたものである。したがって、被告会社には右マンションの賃料支払義務はない。

(二) 仮に、被告会社が形式上賃借人となっているマンションの賃料を原告が支払ったことから、原告につき、被告会社に対する右立替金償還請求権が発生するとしても、その反面、原告には、解雇後、小林社長の指示に反して右マンションを使用していた平成四年一二月ないし平成五年二月までの三か月間、右賃料相当額である四九万七四九〇円(月額一六万五八三〇円)の不当利得が発生しているから、被告会社は、右不当利得返還請求権と原告主張にかかる償還請求権とを、平成八年七月一九日の本件口頭弁論期日において、対等額で相殺した。

5  争点5(子会社従業員に対する賃金立替金償還請求権の有無)について

(原告)

被告会社は、米国カリフォルニア州に、子会社ウェスティック・イチョウ・USA「以下、「ウェスティック・イチョウ」という)を有していたが、右ウェスティック・イチョウは、その債務の支払いを滞らせていたため、被告会社が、従前から資金援助を行っており、平成四年当時は、業務の一環として、右ウェスティック・イチョウ支援のため毎月送金していた。しかしながら、同年一〇月以降、被告会社が右送金を行わなくなったことから、右ウェスティック・イチョウの運営を任せられており、直接管理監督する立場にあった原告が、右ウェスティック・イチョウの従業員であるK・C・アンに対し、同人の平成四年一〇月ないし同年一二月分の賃金として、合計八七〇〇ドル(月額二九〇〇ドル)を立替払した。

原告は、雇用契約に付随した委任もしくは準委任に基づき右金員を立て替えたものであり、右金額は、当時の換算レートで日本円に換算すると、一〇八万七五〇〇円となるから、原告は、被告会社に対し、民法六五〇条に基づき、右一〇八万七五〇〇円の償還請求権を有する。

(被告ら)

(一) 米国関連子会社の従業員と被告会社との間には、何らの雇用関係も存在せず、被告会社には米国関連子会社の従業員の賃金の支払義務が存しない。したがって、彼に、原告が、米国関連子会社の従業員の賃金を立替払いしたとしても、原告に対するその償還義務は、右従業員の雇主である米国関連子会社が負うのであって、原告が被告会社に対して右償還請求をなし得べき根拠はない。

(二) 原告は、被告会社の営業停止後、米国関連子会社の従業員を使って個人的に米国で事業を開始しようとしており、仮に原告が米国関連子会社の従業員に金員を送金したとしても、これは原告が右新規事業を開始するための費用等として送金したものか、あるいは原告が個人で同人を雇用し、その賃金として支払ったものであるから、被告会社には原告主張にかかる金員の償還義務はない。

6  争点6(保守契約代行料請求権の有無)について

(原告)

被告会社は、足立・ヘンダーソン・宮武・藤田法律事務所にコンピュータソフトを供給し、平成四年七月から平成五年六月までの間、同ソフトの保守を内容とする契約を締結し、右契約期間内の保守代金合計三六万円(月額三万円)を、平成四年六月か同年七月ころ、一括して受領した。しかし、被告会社は、平成五年初めから、右保守契約を履行しないようになったため、担当者であった原告が、やむを得ず被告会社に代り、平成五年一月から同年六月までの間、同法律事務所を訪問したり電話連絡をする等して、保守サービスを行った。

原告は、事務管理として、右保守サービスを行ったものであり、保守に要した実費相当額は月額三万円を下らない。よって、原告は、被告会社に対し、平成五年一月から同年六月まで計六か月間の事務管理費用として、一八万円の支払請求権を有する。

(被告ら)

原告主張にかかる保守サービスが行われたことは、否認する。

7  争点7(被告もゝ代の責任)について

(原告)

被告もゝ代は、被告会社の監査役であったが、亡敏夫が死亡した後の平成四年九月ころ、当時の被告会社の代表取締役の小林社長から、その保管にかかる被告会社の実印・通帳・銀行印等一切を取り上げるとともに、被告会社の役員室の鍵を取り替えて小林社長を締め出し、事実上小林社長を代表取締役の立場から追放した。小林社長は被告会社の代表者としての業務執行が不可能となったため、同年一〇月、代表取締役を辞任し、ここにおいて、被告もゝ代は、被告会社の全ての実権を掌握するに至り、事実上の代表取締役となった。被告会社は、平成四年一〇月から同年一二月の時点では、神戸プロジェクトにおいて一〇〇〇万円以上の収入があり、原告に対し、本件請求にかかる支払いをするだけの余裕が十分にあった。しかしながら、被告もゝ代は、これらの収入を原告への支払いに充てずに他に流用してしまい、その後被告会社を事実上の休眠会社にして支払不能に陥れ、原告が被告会社から右金員の回収をはかることを現実的に不可能ならしめた。以上のとおり、被告もゝ代は、監査役として、また平成四年八月ないし遅くとも同年一〇月以降は被告会社の実質的経営者として、優先債権としての従業員の賃金が支払えるよう手配し、会社整理が必要な場合には、従業員に退職を勧めるか、解雇予告通知を出す等して、従業員に対する賃金等の支払いが滞ることのないよう万全の注意をなすべき義務を有するのに、故意ないし重大な過失により前記義務に違反し、被告会社を事実上支払不能の状態にしたものである。原告は、被告もゝ代に対し、平成五年三月一七日付け催告書により、「第一 請求」記載の金六三二万七五〇〇円の請求をなし、同催告書は同月一九日同被告に送達された。

よって、原告は、商法二八〇条、二六六条の三第一項の監査役の責任ないし取締役責任の類推適用、あるいは民法七〇九条に基づき、被告もゝ代に対し、「第一 請求」記載の金員の支払いを求める権利がある。

(被告もゝ代)

亡敏夫の生前、被告もゝ代は、被告会社の監査役として登記されていたが、これは、全く実体を伴わないものであり、何ら監査役としての業務に携わったことはなかった。

また、亡敏夫の死後、被告会社を実質上閉鎖することを決めたのは小林社長であり、解雇の通告等も小林社長が行ったのであり、被告もゝ代は、原告主張のような小林社長の実質的な追放行為に及んだことはない。被告会社が現在の休眠状態に入るのに際して、被告もゝ代が実質的経営者であったことはない。

更に、亡敏夫の死亡当時、被告会社は既に多額の負債を抱え債務超過の状態にあったので、被告もゝ代が、被告会社を事実上の支払不能にしたものではない。

故に、被告もゝ代には、原告主張の金員支払義務はない。

第三当裁判所の判断

一  争点1(賃金請求権の有無)について

1  平成四年一一月分及び同年一二月分の本給の支払請求について

(一) 原告が、被告会社在職中の平成四年当時、月額五〇万円の本給を支給されていたことは、当事者間に争いがない。

(二) 抗弁(平成四年一〇月付け解雇の有無)について検討する。

(1) (証拠略)によれば、小林社長は、平成四年九月、原告に対し、同年一〇月をもって、原告を解雇する旨の意思表示をしたことが認められる。

(2) この点に関し(書証略)(松本和貴による陳述書)には、原告は、被告会社を辞めてもらうメンバーの中には入っていなかった旨記載された部分があり、また、(書証略)(いずれも小林千左三の陳述書)、(書証略)(原告の陳述書)及び原告本人尋問における原告の供述の中には、右に認定した解雇の事実を否定する趣旨の部分が存する。

しかしながら、まず(書証略)については、作成者である(人証略)中に、右に摘示したのとは反対趣旨に理解できる部分が存すること、(書証略)については、その供述状況から内容に高度の信用性が認められる作成者小林自身の(1)認定の内容に沿う前記証言に反することに加え、同じ小林作成の(書証略)(陳述書)と(人証略)によれば、小林は、体調の不良もあって、他人の作成してきた陳述書については内容的に十分な審査をしないまま署名した節が窺えることに照らして、いずれも信用性に疑問がある。

更に、本件においては、(証拠略)、後藤もゝ代被告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、<1>被告会社は、かねてから業績が悪く、亡敏夫の全面的資金援助によりかろうじて維持されてきており、亡敏夫の生前中から、被告会社神戸営業所は独立させて存続させるが、同東京営業所は平成四年一杯で閉めるという方針が打ち出されていたこと、<2>平成四年八月一三日、亡敏夫が死亡し、被告会社の資金繰の目処が立たなくなったことから、小林社長は、被告会社を早い段階で閉鎖することとし、平成四年八月末ころ、被告もゝ代にその旨説明した上、平成四年一〇月一杯で全社員を整理し、営業を完全に止めて、被告会社を休眠状態にすることを決定したこと、<3>小林社長は、平成四年九月、東京営業所に、たまたま出張中で不在であった原告を除く同営業所所属の従業員を招集し、もはや被告会社の存続は不可能であり、賃金及び退職金等を支払うこともできない状況にあって、平成四年一〇月二〇日に支給される同月分の賃金が最後の賃金の支払いになるので、それまでに従業員は全員新しい職場を捜すようにしてほしい旨を伝えて退職を求め、被告会社の窮状を知っていた被告会社従業員は、原告を除き、全員小林社長の説明に納得し、退職することに同意したこと、<4>原告は、同年一〇月ころ、自主退職はしない意思であることを従業員の久保孝一らに表明しており、小林社長も原告が被告会社を素直に辞めようとしていないのだと右久保に話していたこと、<5>小林社長は、被告会社の残務整理がほぼ終了したことから、平成四年一〇月末日付けで自らも被告会社を退職したこと、<6>東京営業所には、残務整理のために、西陽子、久保孝一外二名の女子従業員が残ったが、いずれも一か月後の同年一一月二〇日付けで退職し、神戸営業所の従業員も、同年一一月末日付けで全員退職したことの一連の事実経過が認められるのであり、この経過に徴すれば、小林社長は、原告に対しても、平成四年九月の段階において、他の従業員に対するのと同様に退職を求め、これに応じない原告に対し、同年一〇月付けで解雇の意思表示を行ったと認めるのが成り行き上も自然と考えられる。

そうすると、(1)に認定したところに反する前掲各証拠は、(1)の認定に影響を与えるものではないとするのが相当である。

2  追加賃金の支払請求について

この点については、以下のとおり、結論としてこれを認めるに足りる証拠がない。

まず、(書証略)(原告の陳述書)及び原告本人尋問において、原告は、原告と被告会社間に、原告に対する追加賃金支払の合意が存したとし、(書証略)(個別業務委託書)がそのための書面であるとする。しかしながら、右個別業務委託書は、被告会社が有限会社エヌ・アンド・ワイに対し、被告会社が受注して開発する情報システムに関する設計作業、被告会社要員の教育及び被告会社が指示する作業を、右有限会社(指定する作業者は原告)に対し、基準月額二五万円で委託するということが記載された書面であって、被告会社が原告に対し、追加賃金を支払うことを約束した内容とはなっていない。原告本人尋問において、原告は、原告の賃金を上げることによって従業員の平均賃金が上昇することを防止し、また、全体のバランスをはかる必要性が存したことから、実質的には原告に対する追加賃金の支給の合意であるにもかかわらず、原告の副収入の入金の窓口であるペーパーカンパニーの有限会社エヌ・アンド・ワイの業務委託契約に基づく業務委託料という形式を用いたものである旨を述べているが、仮に右必要性等を肯定したとしても、追加賃金の支払いのためにそのような形式をとることが合理的方法であるとも思われない。また、仮に原告につき、五〇万円の本給以外に二五万円の追加賃金の支払約束が存したとすると、原告の賃金は、社長である小林の賃金よりも月額で一五万円も高くなることになり(書証略)、こうした現象は、特別な理由がない限り、極めて不合理で不自然であると言わざるを得ないが、これを合理的ならしめる事情は、本件証拠上見あたらない。さらに、(書証略)及び原告本人尋問の結果によれば、右個別業務委託書は、原告作成にかかるものであると認められ、また右書面に使用されている角印は、被告会社の代表印ではなく、原告に使用が許されていたものであることが認められる。以上からすれば、原告本人尋問の結果及び(書証略)をもって、直ちに原告主張にかかる差額賃金支払の合意が存したことを認めることはできない。

次に、(人証略)の中には、(書証略)により実質的に原告の賃金を補填することとしたことを肯定したようにもとれる部分があるが、これのみでは、問題となっている金員の性質及び支払条件等が不明であって、原告主張にかかる追加賃金の支払合意が存したことまでをも証言した趣旨であるか否か明確ではなく、追加賃金支払合意の証拠として十分ではない。

更に、本件における原告の請求は、原告に対する月額五〇万円の本給が平成四年一〇月分まで支払われたのに対し、その主張する追加賃金は平成四年一月分以降支払われていないことを前提とするものであるところ、真実追加賃金であったとすれば何故本給と異なる支給経過となっていたのか疑問の残るところでもある。原告は、右追加賃金の支給は、原告と亡敏夫の間で合意されたとするが、前記のとおり亡敏夫は平成四年八月に死亡したのであり、その生前から原告主張の追加賃金の支払いが滞っていたことになるのであるところ、当時から被告会社が負債を抱えていたとはいえ、他の従業員への賃金が遅配になった等の事情も証拠上窺えないことからすれば、原告主張の月二五万円の追加賃金を支払えない程度に至っていたとは認め難く、他に追加賃金分のみを支給しない事情は窺えない。そうすると、原告の前提とする支払状況自体が、本給と二五万円の部分の性質が異なるものではないかと疑わせることを否定できない。

そして、以上の他の証拠中に、これを証するに足りるものはない。

3  以上のとおりであるから、賃金請求に関する原告の請求はいずれも理由がない。

二  争点2(出張費用立替金償還請求権の有無)及び同5(米国関連会社の従業員に対する賃金立替金償還請求権の有無)について

1  (証拠略)、原告・被告後藤もゝ代各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実関係が認められる。

五洋通商は、美術品関連業務により、十分な利益を上げていたが、問題が生じた場合に、五洋通商に直接影響が及ばないための備えとして、利益を分散して保有することとし、系列会社や関連会社を次々に増やして一〇社に上る関連会社を作り上げ、被告会社もその一つとして設立された。又、五洋通商の関連会社は、米国にも存在した。右関連会社の経営管理は、亡敏夫、小林社長及び松本和貴の三名で行われ、亡敏夫はオーナーとして関連会社全般の経営管理を実施し、小林社長は被告会社及びセンチュリーアパレルジャパンの代表取締役の立場にあった。右三名は、五洋通商、被告会社といった法人格の単位にとらわれず、他の関連会社を含め全体的に運営に当たっていた。

亡敏夫は、次第にコンピュータ関連業務に力を入れるようになり、原告が被告会社に入社したのも、コンピュータ業務の遂行能力を期待されたからであった。原告は、被告会社においてはソフト開発業務の幹部社員であったが、亡敏夫は、原告の実際の働きが期待したほどではなかったため、折を見て、独立させようとの考えの下、原告を米国関連会社であるウェスティック・イチョウの担当とした。ウェスティック・イチョウは、五洋通商の前記米国における関連会社で、被告会社とも関連会社ではあるが、被告会社のいわゆる子会社ではない。同社は、定款上はコンピュータの周辺機器・消耗品の販売を目的としていたが、亡敏夫の存命中、殆ど利益が上がらない状態であり、亡敏夫が日本から送った金を基に運営されていた。同社の運営に関する事務は、日本においては、亡敏夫と原告とが行っており、小林社長は関与していなかった。原告は、亡敏夫の承諾の下に、同社の業務遂行のため、何度も米国に渡航していたが、これらの渡航に要した費用は、亡敏夫の判断で被告会社において負担していた。亡敏夫死亡後、小林社長は、当初ウェスティック・イチョウに送金する運営資金の面倒をみたが、程なく、原告に対し、被告会社閉鎖後もウェスティック・イチョウを存続していきたいのであれば、個人として、被告もゝ代と相談して進めるようにと指示した。

2  右の認定にかかる事実関係を前提に、まず、出張費用立替金償還請求の点について検討する。

(1) (証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、平成三年八月九日ないし同月二〇日まで、同年一〇月三日ないし同月一二日まで、同年一一月二〇日ないし同月二八日まで、平成四年七月九日ないし同月一七日まで、同年九月一五日ないし同月二五日まで、いずれも米国に渡航し、その際、諸々の費用を支出したことが認められる。

(2) 原告のこれらの渡航が、ウェスティック・イチョウの業務に関連するものであることは原告も認めているところ、雇用契約に付随した委任もしくは準委任を根拠に渡航関係費用の支払いを請求する以上、当然、その支出は、雇用契約関係の存する被告会社の業務遂行上必要なものであるか、あるいは少なくともそれと合理的関連性を有するものであることが要求されると解される。前記認定のとおり、ウェスティック・イチョウは、被告会社の関連会社ではあっても子会社ではなく、その運営の関係での原告の米国渡航費用を被告会社において負担すべきであったのかどうかについては疑問がないわけではなく、また、証拠上、被告会社とウェスティック・イチョウの各業務の関係が不明でもあるが、被告会社の代表者であった亡敏夫が右費用を被告会社に負担させていたことからすると、原告の前記米国渡航が被告会社の業務と合理的関連性を有していたことを否定はできないであろう。そこで、(1)に認定した原告の米国渡航の際に原告が支払い精算未了の金額を検討すると、(書証略)及び弁論の全趣旨によれば、以下の金額であると認められる。

平成三年八月の渡航分 二五万四九七八円

同年一〇月の渡航分 九万一八九〇円

同年一一月の渡航分 一四万三四九〇円

平成四年七月の渡航分 二万九八七二円

原告は、本件において、平成三年八月以前の精算未了の分として三〇万八二一八円、平成四年九月の渡航分として八六万三一二一円をも請求しているが、前者については、(書証略)には前回分として当該金額の表示はあるものの、右に認定した分と異なってその内訳等が不明で具体性がなく、他の証拠と総合しても、この部分については精算未了金員の存在を認めるに足りない。後者については、(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、原告の平成四年九月の渡航に際しては、一二〇万円の仮払金が被告会社から原告に支払われていることが認められるから、精算未了分はないものと言う外はない。

(3) 被告会社による相殺について

本件においては、平成八年七月一九日の本件口頭弁論期日において、被告会社が、右平成四年九月の渡航分の仮払金から実際に要した費用を差し引いた三三万六八七九円の返還請求権と、原告の前記認定にかかる精算未了の費用償還請求権とを対等額で相殺する旨意思表示したことは、当裁判所に顕著である。したがって、この相殺の結果、被告会社が原告に支払うべき渡航費用の残金は一八万三三五一円となる。

この点について、原告は、右三三万六八七九円の返還請求権と、原告が平成四年一一月に米国へ渡航した際の六一万七〇八九円の費用償還請求権との相殺を主張するが、前記認定のとおり、被告会社は平成四年一一月の段階では小林社長も退任し、一部の残務整理等の担当者を除いて従業員が皆退職し、実質的に閉鎖された状況にあったのであり、この段階での原告の米国渡航が被告会社の業務と合理的関連性を有し、被告会社の代表者の許可ないしは了承の下で行われたとは認め難いから、原告の右相殺の主張は前提を欠く。

(4) 以上によれば、原告の出張費用立替金償還請求は、一八万三三五一円の限度で理由がある。

3  さらに、米国関連会社従業員に対する賃金立替費用償還請求の点について検討する。

前記認定のとおり、被告会社とウェスティック・イチョウとは、共に五洋通商の関連会社ではあるが、それぞれ別の法人であるから、被告会社に、ウェスティック・イチョウの従業員に対する賃金支払義務は直ちには生じない。また、(人証略)によれば、小林社長は、原告に対し、右従業員の未払賃金の立替払いを命じたり、またはこれを許したことがないことが認められる。前記認定のとおり、原告が亡敏夫からウェスティック・イチョウの運営を任せられていたこと、ウェスティック・イチョウの従業員であるK・C・アンの賃金は亡敏夫が負担しており、同人死亡後は、小林社長がウェスティック・イチョウの資金繰りの面倒をみたことは認められるが、これを考慮しても、原告による右立替払いが、被告会社の業務遂行上必要であり、あるいは、これと合理的関連性を有することを認めるに足りる証拠はなく、仮に、原告が右金員を立て替えたとしても、雇用契約に付随した委任もしくは準委任に基づく行為であるとは認められない。

そうすると、この点に関する原告の主張は、理由がない。

三  争点3(パーソナルコンピュータ購入代金立替金償還請求権の有無)について

この点に関し、原告は、その本人尋問において、原告の主張に沿う供述をしているが、(人証略)によれば、小林社長は、原告に対し、原告主張にかかるパーソナル・コンピュータの購入についての権限ないし許可を与えていないこと、当該コンピュータが被告会社東京営業所の機械台帳に登載されていなかったことが認められるのに加え、購入後右コンピュータを被告会社において使用する等したことが証拠上何ら窺えないこと等に照らすと採用できず、他に右購入に関し、原告と被告会社間において、雇用契約に付随した委任もしくは準委任関係が存したことを認めるに足りる証拠はない。

そうすると、この点に関する原告の請求は理由がない。

四  争点4(マンション賃料立替金償還請求権の有無)について

1  (証拠略)、原告本人尋問の結果(但し、以下の認定に反する部分を除く)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実関係が認められる。

被告会社は、従業員に社宅を与えていたが、有限会社長井興産から、東京都千代田区(以下、略)所在のマンションを借り上げ、原告に対しても、これを社宅として使用させていた。原告は、右マンションに、コンピュータ、プリンター及び私物の寝具等を運び込み、そこを仕事場や、自宅に帰らないときの宿泊所として利用しており、原告以外の者が右マンションに寝泊まりすることは全くなかった。小林社長は、被告会社の閉鎖にあたり、平成四年一〇月初旬ないし同月中旬ころ、借上社宅を使用している原告を含む従業員各自に対し、当該不動産を借り続けたければ、借主の名義を変更して借りるようにとの話をし、平成四年一一月分まで、被告会社が右マンションの賃料を支払った。その後、原告は、同有限会社の代表取締役である長井幾太郎に対し、「今後とも自分が賃料を支払うからこのマンションを借り続けたい」旨を申入れ、自己の名において、平成四年一二月分ないし平成五年二月分の賃料を支払った。原告は、平成五年二月末ころ、同有限会社に対し、マンションを明け渡したい旨を申入れ、間もなく、これを明け渡した。

2  以上の事実関係によれば、小林社長は、平成四年一〇月初旬ないし同月中旬ころ、社宅を使用している原告を含む従業員に対し、被告会社と各賃貸人との間における賃貸借契約を解除する代理権を授与したことが推認され、また、原告は、平成四年一二月ころ、右代理権を行使して、被告会社と賃貸人である有限会社長井興産との間における賃貸借契約を解除するとともに、右有限会社に対し、自己を賃借人とする賃貸借契約の締結を申し込み、賃貸人である右有限会社がこれを承諾したことが認められる。

もっとも、(書証略)によれば、同有限会社は、同社と原告との賃貸借契約書を新たに作り直さなかったことが認められるが、そもそも賃貸借契約は、無要式契約である上、賃借人が被告会社から原告に切り替わったとしても、その前後を通じ、マンションの実際の使用者が原告であったことに変化がなかったことからすれば、賃借人が原告に切り替わった際、賃貸借契約書の作成を省略することも十分に考えられるところであって、このことから右認定が防げられるものではない。

そうすると、被告会社の賃貸借契約は、平成四年一一月をもって終了していることが認められ、また、前記認定のとおり、原告及び被告会社間の雇用契約は平成四年一〇月で終了していることからすれば、原告が、平成四年一二月以降の賃料を支払ったとしても、雇用契約に付随した委任もしくは準委任に基づき、原告が被告会社のためにこれを立て替えたものと認めることはできない。

したがって、この点に関する原告の請求は理由がない。

五  争点6(保守契約代行料請求権の有無)について

事務管理者の費用償還請求権については、民法七〇二条が規定するところであるが、原告は、保守に要した実費相当額は月額三万円を下らないと主張するのみで、同条に規定する事務管理を行う上で支出した「本人のために有益なる費用」の具体的内容については、主張上も、証拠上も明確にしていない。

そうすると、この点についての原告の請求は理由がない。

六  争点7(被告もゝ代の責任)について

以上のとおり、原告の被告会社に対する請求は、一八万三三五一円を超えては認められないから、被告もゝ代に対する請求関係についても、右金額を超える部分については、いずれも損害の発生が認められないこととなる。

また、(証拠略)、被告後藤もゝ代本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告もゝ代については、被告会社監査役として前記認定の登記がなされていたが、これは亡敏夫が一存で行ったもので、被告もゝ代は何ら承諾等をしたこともなく、自己についてそのような登記がなされていること自体を知らなかったこと、亡敏夫の死後も、同被告は当初被告会社の経営には携わっておらず、被告会社を実質的に閉鎖することも小林社長が決めたもので、被告もゝ代はその結論を聞かされたにすぎないこと、被告もゝ代は現在では被告会社の代表者であるが、小林が退任した際に、既に被告会社は実質的には閉鎖状況で、それを引き継いだものであること等が認められる。これらの事情に照らすと、被告もゝ代が監査役や実質的経営者として原告に損害が発生することを防止する立場にあったとは言い難いし、また、本件証拠上、被告もゝ代に、職務を行うについての悪意又は重大な過失あるいは原告の利益侵害についての故意・過失が存したということも認められない。よって、原告の被告もゝ代に対する請求は理由がない。

七  以上の理由で主文のとおり判決するが、仮執行宣言は、相当でないので、これを付さない。

(裁判官 合田智子)

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